再会 横関大

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 Fans:Fansで募集していた横関大著『再会』を献本いただいたので、書評を書いてみる。久々だな、書評って。

 横関大さんの『再会』は今年行われた第56回江戸川乱歩賞受賞作で、なんでも横関さんは8回目の応募にして受賞したとのこと。

挑戦8年、自然体で大願成就 第56回江戸川乱歩賞受賞 横関大さん [産経ニュース]

数多くの有名作家を輩出してきた江戸川乱歩賞(日本推理作家協会主催)は、セミプロ級の応募も多く、公募ミステリー賞の最高峰とも呼ばれている。第56回受賞者となった横関大(よこぜき・だい)さん(35)は、静岡県富士宮市職員。連続応募8回目に加え、最終選考にも過去3度残った乱歩賞の常連だ。8年越しの"大願成就"だが、「最終選考に鍛えていただいた」とあくまで控えめだった。

ぜんぜん知らなかったんですけど、江戸川乱歩賞って推理小説の新人作家に与えられる賞なんですね(嫁談)。あんま深く考えずに応募してみて、届いた本をぺらぺらとページをめくったら、、、もう、止まらなくなっちゃいました。

 ちなみに、この本を出版した講談社のサイトにはこのように掲載されています。

再会 横関大 講談社


第56回江戸川乱歩賞受賞作

全てはタイムカプセルにとじ込めた――はずだった。

誰がうそをついている? 幼なじみの4人が校庭に埋めた拳銃は、23年の時を経て再び放たれた。それぞれの想い出が重なるとき、時を越えたさらなる真実(なぞ)が目を覚ます――!


予選委員会から本選考会まで、常にトップを走り続けた驚愕の小説。選考委員、喝采

幾度も挑戦し、ここに大きな成果を得た受賞者に、心より拍手を送りたい――天童荒太氏

「乱歩賞の傾向と対策」のようなものから解放された――東野圭吾氏

話作りも丁寧で抜群の安定感――恩田陸氏

想像を絶するほどの苦心のあとが窺える――内田康夫氏

あと、特集ページなんてのもあった。

 っと、公開されている情報はこのくらいにして、感想でも書きますか。


 物語の舞台は横浜北部の街。小学校時代の幼なじみが20数年の時を経て、とある事件をきっかけに再会を果たす。その運命と偶然の出会いが織りなす、推理小説です。

 数ページ読んで思ったのですが、時間軸と場面展開が非常にユニーク。小説は読み進めるにつれて、物語の枠組みとプロットが見えてくるのですが、この小説はその流れが非常に丁寧に作られており、正直どこかで読み止めることが出来ないような創りになっています。あ、でも、推理小説なんだから、徐々に明らかになっていくってのは当然なのか。
 あと、1ページ目から最終ページまでの時間軸が、過去にさかのぼることはありますが、今起きている話しの流れでは2週間程度の話しだというのも、ポイントなのかもしれません。や、終盤にちょっと進むだけで、物語の中心は数日間の話しなんだよね。
 また、この話しの主要登場人物4人が自分と同じ35歳だったというのも、読み込んでしまった理由なのかな。そして、女性1人と男性3人という組み合わせの妙が光っていると思います。なにが、どう光っているのかは、是非とも手にとって読んで頂きたいと思います。

 正直、ちょっと偶然が重なりすぎなんじゃないかと思う展開だと思いましたが、それは偶然じゃなくて必然だということが終盤に向けてどんどん解き明かされます。
 そして、物語の最後、事実だけを考えると辛い結末のようにも思えますが、4人が再会したことによって新たに生まれた時の歩みが、明るいであろう将来展望につながります。そして、読み終わった後に読み始めた瞬間から物語全体に覆いかぶさっていた想いがすっきりする、ちょっと今までにない感覚を覚えました。

 私は、年に2回ほど、ハードカバーの小説を買います。選ぶジャンルはSFかファンタジーで、推理小説は大人になってからは初めてなのかも。『再会』はそんな、私でもとても満足できる作品でした。普段小説を読まない人にも、オススメしたい一冊です。