A.ロッテラーが小林可夢偉に代わりベルギーGPにケータハムから参戦?

F1及び国内モータースポーツ界隈では昨日からこの話題で持ちきりです。今週末、ツインリンクもてぎで行われるスーパーフォーミュラのロッテラーのエントリーが消えているとか、元F1ドライバーがロッテラーがケータハムから参戦とツイートするとか、海外メディアはもちろん国内モータースポーツメディアでもこの話題が取り上げられるなど(噂レベルのものも含めて)、F1はもちろん国内モータースポーツが大好きな私にとっても気が気でありません。

昨年F1シートを失い、フェラーリからWECのLMGTE-PROクラスに参戦していた可夢偉は、今年ケータハムF1チームからF1復帰を果たします。しかし、ケータハムのマシンに戦闘力はなくトップからは数秒遅れでグリッド後方での争いが強いられます。またチームの状況も不安定な状態が続き、更には第9戦イギリスGP直前にオーナーのトニー・フェルナンデスがチームをスイスと中東のコンソーシアムなる香ばしい人々の手に売却されてしまいました。チーム代表には元F1ドライバーのクリスチャン・アルバース、そしてその影にはコリン・コレスがちらつきますが、この名前を聞いて良いイメージのF1ファンは少ないでしょう。早速チームは大幅なリストラを行い、そのリストラが激しすぎで従業員からチームを提訴するニュースまで飛び交いました。

チームの突然の体制変更がイギリスGP前、ドイツGP、ハンガリーGPを経てF1は4週間の夏休みに入りました。その期間、可夢偉も日本に戻り、富士スピードウェイで行われたスーパーGT第5戦にも姿を表していました。夏休み期間中に可夢偉のインタビュー記事が国内モータースポーツメディアに掲載されましたが、若干気になるコメントを可夢偉がしていました。それは自身の去就について、実力のある自分を残しポイントを獲得し、コンストラクターズランキングを一つでも上で終えることがケータハムがとる最良な選択である、といった内容についてです。そのコメント自体は極めて理にかなった話であり、ドライバーラインナップに手を加えるのは、テストなどが厳しく制限されている現在のF1に於いてはリスキーと言えるでしょう(F1経験者でチャンピオン争いをしたようなドライバーなら話は別ですがね)。可夢偉がこのような発言をあえてした、その点がどうしても気になっていました。

さて、突然F1デビューの話題が浮上してきたアンドレ・ロッテラーについてですが、実は国内モータースポーツを見ているファンにとっては知らない人はいない、実力派ドライバーです。1981年ドイツで生まれの32歳、2000年にはドイツF3に参戦、ジャガーチームかのテストドライバー、2002年にはリザーブドライバーも経験しています。2003年には日本に活動の場を移し、当初はホンダ系チームからSUPER GT及びフォーミュラニッポンに参戦していましたが、2006年にはトヨタ系チームに移籍しSUPER GTのチャンピオンを獲得します(チームメイトは脇阪寿一)。その後も2009年に再度SUPER GTでチャンピオン、2011年にはフォーミュラニッポンでもシリーズチャンピオンに輝きます。さらには2008年からル・マン24時間レースにも参戦、2011年にはアウディチームで総合優勝を飾り、2012年も連覇。そして、この年には活動の場をWECに移しドライバーズチャンピオンにも輝いています。

身長184cmでガッチリしていますが、とてもイケメンで、日本人ファンも多いドライバーです。レーシングスタイルはとてもアグレッシブで、国内カテゴリーにおいても評価は極めて高いです。特に雨が絡むレースで印象の残るドライビングを多く見ています。私自身、特にロッテラーファンと言うわけではありませんが、彼がこの年にしてF1のシートを獲得することについてはとても嬉しいという気持ちです。が、それが可夢偉の代わりにとなると話は全く別ですが、、、。

さてと、今回の件を総合的に考えるとドライバーの実力というよりも現在の環境の面で可夢偉をロッテラーに替えるのは、馬鹿げた判断だと言わざるを得ません。確かにロッテラーの実力を考えれば、F1でも十分に争えるドライバーだと思います。しかし、シーズン途中のしかも最下位争いを毎レース続けているケータハムのマシンにテストもせずに乗り、いきなり可夢偉を上回る成績を残せるかというと、その可能性は極めて低いと私は考えます。世界選手権であるLMP1-HYクラスのマシンや、国内フォーミュラ最高峰のSF14をドライブしているロッテラーですが、F1マシンとはすべてが違います。完全に準備が整った可夢偉と比較するのは所詮無理という話です。
そして、可夢偉とチームメイトのマーカス・エリクソンを比較すると、予選は9勝2敗、決勝は6勝2敗で可夢偉が圧倒しています。もちろん、実力的にも可夢偉を評価する声はヨーロッパでも多く聞かれます(ちなみに、このマーカス・エリクソンも2009年には全日本F3でチャンピオンを獲得しており、日本と縁があるドライバーです)。そう考えると、エリクソンとロッテラーを替えるほうが、コンストラクターズ争いにおいては価値がある行為だと思いますが(それも無意味で、ドライバーラインナップには手を入れるべきでないと私は考えます)、このような話が出てきている時点でもはやこのチームの第一優先事項はコンストラクターズ争いではない状況なのだろうと推測せざるを得ません。

エリクソンはある程度の資金をチームに持ち込んでいます。可夢偉もある程度の金額をチームに持ち込んでいますが、エリクソンよりは明らかに少ないと考えられます。F1チームの運営には多額のお金がかかり、下位チームにおいてはそのシートを億単位のお金で売ることは常套手段となっています(昨年今年は見ていませんでしたが)。しかし、そのような行為に出てチームの問題が根本的に解決できるのかというと、まず問題解決には結びつかないと思われます。だた、今のケータハムの状況はそのような先の話よりも、今の話を優先せざるをえないということでしょう、、、。ロッテラーサイドもある程度の金額を持ち込むことができると考えられ、チーム存続のためには必要な決断と考えられます。部外者であるいちF1ファンとしては極めてくだらない決断であり、F1の価値を下げるだけの行為と思っていますけどね。

公式な情報は何一つ出ていない状況ですが、今週末のスーパーフォーミュラにロッテラーが参戦しないことは事実。そして、F1屈指のチャレンジングなコース、スパ・フランコルシャンでのベルギーGPは今週金曜日に開幕します。たぶん、なにか動きがあるのなら水曜日中に発表があると思われます。我々ができることは何もありませんが、事実を受け止める心の準備だけはしておきたいと思います。ああ、ロッテラーと可夢偉がF1で鈴鹿を走る、、、そんなシーンを見られるのなら最高の結末なのですが(マーカスごめん)。