高校生と過ごした、下北沢の夏 【1】 「福島県立大沼高等学校演劇部東京公演 『シュレーディンガーの猫 ~Our Last Question~』」

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 昔から思い立ったら即行動しちゃいます。本を買って感動したら著者に会いに行くし、ドラマで感動したシーンがあったら、ロケ地を探し出して観に行っちゃう。よく考えたら高校も大学も何かがきっかけで思い立ち、結果的にそこに通ってる。ああ、そうだ東京に来たのだって、下北沢で会社作ったのも同じなんだよね。

 そんな俺が久々に動きました。下北沢情報サイトを運営していることもあり、下北沢のニュースは常にチェックしているのですが、5月にこんな記事を見つけたことがきっかけです。

今を生きる 避難者の思い 舞台に 下北沢(東京)で8月公演 被災者支援団体 橋渡し [福島民報]

きちゃいました即行動センサーにビビっと。記事の内容から高校よりもウシトラ旅団なる組織にアプローチする方がよいと判断、Facebookページを発見したのでそこからメッセージを送るとすぐに返事がきて会うことになりました。

 最初は下北沢の公演のお手伝いとメディアとしての協力を申し出たのですが、福島から高校生を呼んでの公演、何となくお金の問題がありそうな気がしたので思い切ってクラウドファンディングでお金を集めてみないかと提案。やはり、そこが最大のネックであることを打ち明けて頂き、それならとクラウドファンディングプロジェクトの立ち上げに突き進みました。

 でも話を聞いた上で考えれば考えるほど、大沼高校演劇部・ウシトラ旅団・俺の関係がなんともわかりにくい。さらに、賛助公演で会津若松ザベリオ学園高校演劇部も来る、、、。クラウドファンディングはわかりやすさが重要。どんなにすばらしいプロジェクトでも、見る人に理解をしてもらえなければどうにもなりません。特にそのプロジェクトを動かす母体がわかりやすくなければいけません。そのあたりをなんとか整理をしてCAMPFIREに投稿、その日のうちにCAMPFIREから詳細を送ってくれと連絡があり、昨年の元嶋プロジェクトに続き2回目となるクラウドファンディングの準備が始まりました。

 この時点で私は大沼高校演劇部の皆さんに会っていません、会津は近そうで遠い、、、ちょっと行ってくるということができない距離。ただ、ウシトラ旅団の皆さんは公演も見ているし、部員の皆さんといろいろ話もしている、とにかく彼らからいろいろな話を聞くしかありません。プロジェクトを書き進める中(CAMPFIREでは初期の審査にとおった後、公開用のデータ作成が必要なのです)、スマホで撮影した公演データを観る機会がありました。スマホで、しかも手持ちで撮った写真なので、画としてはどうしようもないのですが、台詞はキッチリ聞き取れます。泣けました、泣けたというか号泣です。自分が考えていた以上のとてつもないメッセージが伝わってきました。このお芝居は絶対に成功させなければいけない、そのためにもクラウドファンディングのプロジェクトも成功させなければいけない、その映像を編集しプロジェクトの動画としてプロジェクトのデータが揃いました。

 2013年7月17日、クラウドファンディングプロジェクト『福島県立大沼高等学校演劇部東京公演【シュレーディンガーの猫】を成功させたい』がはじまりました。初日に29,000円、2日目で80,000円、出だしは順調でしたがそこからが伸び悩みます。状況が急変したのは7月31日、一気に251,000円に到達すると、日に日に支援金額は増え8月5日に目標額の350,000円を超え、最終日となる8月9日に433,500円のファンディングに成功し、プロジェクトを成立させることができました。

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 それと前後する8月6日、私は会津に行きました。大沼高校で両校の通し稽古が行われ、プロデューサーと照明担当(この2人はプロフェッショナルです)が打ち合わせをするとのこと。このチャンスを逃すと彼らが下北沢に来るまで会うことができない、仕事の都合を付けて私も会津に向かいました。
 大沼高校のある会津美里町は、会津若松市の南西に位置する人口22,500人ほどの町。田んぼに囲まれた、どことなく自分の出身地と同じ様な雰囲気の町でした。しかし、明らかに自分の町とは違うものがあります、『楢葉町宮里応急仮設住宅』そんな交通案内板がそこにはありました。看板の指す方向を眺めるとたくさんの仮設住宅が並んでおり、瞬間的に福島の現在進行形の状況を知ることになります。
 ちなみに、楢葉町宮里応急仮設住宅では5月8日に大沼高校演劇部の公演が行われています。その時の模様はこちらのブログをご覧下さい、仮設内で演劇公演[楢葉町宮里応急仮設住宅 自治会ブログ]。本当に素晴らしい公演だったようです。

 この日、会津地方は涼しい天候でしたが、練習が行われていた体育館は熱気に包み込まれていました。そこには下北沢にある小劇場楽園を模した空間が作られています。我々が到着してすぐに、大沼高校演劇部と会津若松ザベリオ学園高校演劇部、両校の通し稽古がスタート。まずはザベリオの「彼女の旋律」、この作品も避難している学生とのお話。タイトルにもなっている"彼女の旋律"が本当に美しい作品でした。

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 続いて大沼高校の通し稽古。取材目的できているので写真を撮りながらでしたが、、、もう、ダメです。事前に何度も公演映像は見ていたのに、それでも涙無くして観ることができないお芝居でした。

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 お芝居がなぜ目の前で見ることが最大の価値でありつづけるのか、その空間の空気ですよ空気。シーンが進む中で、状況が変わるじゃないですか、その時に明らかにその場の空気が変わるんです、鳥肌が立ちます。この通し稽古で、その空気が変わる瞬間を体感してしまって、もうこれは絶対に観た人に伝わるお芝居だと確信しました。

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 そして迎えた8月12日、下北沢の小劇場楽園で最終ミーティングが行われ、13日には照明セッティング、14日には両校部員が小屋入りし、暑くて熱い「高校生と過ごした、下北沢の夏」がはじまりました。

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* 高校生と過ごした、下北沢の夏 【2】「福島県立大沼高等学校演劇部東京公演 『シュレーディンガーの猫 ~Our Last Question~』」へ。