2011年5月30日

データセンターの電力使用制限緩和が意味すること

[ReTweet This!] カテゴリ:さくらインターネット/サーバ移転/データセンター/電力使用制限問題

 東日本大震災の影響で、いろいろな発電所がダメージを受けているのは皆さんご存じだと思います。その影響でこの夏の電力供給が足らないとのことで、当初は一律15%の節電が全ての企業に求められていました。15%って簡単にイメージ出来ないのですが、自分の関わるところでデータセンターがこの15%の電力消費を目指すのは相当困難じゃないかな、と、考えていました。

 早くからさくらインターネットの田中社長などが、データセンター事業者がこの節電を果たすのは困難と言われておりまして、どうなるのか不安でした。そして、5月25日に経済産業省が発表した電力需給対策の詳細にて、電力使用制限の適用除外と制限緩和の業種を発表し、データセンター事業者は0~10%の制限緩和業種となりました。
 正確には、『安定的な経済活動・社会生活に不可欠な需要設備』で『4時間・365日電力使用の変動幅がほぼフラットな需要設備』中の『情報処理システムに関わる需要設備(データセンター、金融機関、航空、通信関係のシステム)』でデータセンター事業者が入っています。
 日本経済新聞の総合面にて、さくらインターネットの田中社長は、
「顧客企業のデータを守るうえで助かる措置だ」
とコメントされており、これはさくらインターネットに限らず全てのデータセンター事業者にとっても、必要な措置だったと考えているでしょう。当然ですが、データセンターを利用している我々にとっても、今回の措置である程度心配事が減ったと考えています。

004.JPG

* * * * *

 データセンターの電力消費推移についていまいちイメージ出来ないのですが、サーバ稼働台数が24時間で大きく変動するわけではないので、ベースで消費する電力ってのはある程度変わらずに推移していると思われます。当然、処理数が増える時間帯が電力消費が増えるのでしょうけど、真夏の場合は日中の空調設備による電力消費の方が圧倒的に大きいのではないでしょうか。そういう意味では、一般企業と同じような時間帯にどうしても電力を消費せざるを得ないと考えられます。

 データセンターが15%の電力消費削減を求められた場合、どのような対応となったのでしょうか? 一番最初に考えるのは、自家発電でその分の電力をまかなうということですが、データセンターの自家発電装置は一時的な停電などの万が一のための設備であり、数ヶ月間稼働させることを前提に作られてはいないと思われます(推測ですが)。また、稼働させたとしても発電のためのコストは通常の電力に比べれば高くなり、事業者のビジネスを圧迫しかねないでしょう。正直な話し、今回の制限緩和がデータセンター事業者に適用されなかった場合、データセンターというビジネス自体が非常に危うい状況に置かれたのではないかと思われます。

* * * * *

 私が管理しているサーバについて、データセンターを利用しているものもありますが、自社に設置しているサーバもあります。なぜ自社に設置しているかというと、単純に運用コストが安いからに他なりません。ネット回線や設置コストなどデータセンターとは比較にならないくらい安いです。当然ながらデータセンターのような耐震性や安定的な電力供給、セキュリティ、回線品質を求めることは難しいですが、提供ビジネスから考えると自社サーバを選択せざるを得ませんでした。
 しかし、この夏の節電目標や、大規模停電の発生する可能性、また、現時点では未定ですが電力コストの増大を考えると、自社内にサーバ設置することのメリットはかなり薄れてきたと考えられます。地震によってインフラに被害が発生しサービス提供が出来なくなるリスクも、これまでは低めに見積もっていましたが、今回の震災をうけほとんどのインフラ担当者は自社内にサーバを設置するリスクを高めに考えるようになったのではないでしょうか。
 私が管理している社内に設置されたサーバは、震災前に比べ5台ほど削減しました。この削減は単純に電力消費を抑える為(震災直後の電力供給問題に際し)でしたが、残り10数台のサーバについて扱いについてリスクの観点から対応を考えました。いろいろな選択を熟考した結果、思い切ってそのほとんどをデータセンター側に移行しようと考えています。ラックを借りてサーバを設置して自社で管理するのか、レンタルサーバ的なモノを利用するのか、はたまたAWSのようなクラウドを利用するのか未定ですが、どちらにしても自社に設置するサーバは最小限に抑えたいと考えています。

 この辺りは正確なことがわからないのですが、現在自社内にサーバを設置している会社の数は少なくないと思います。データセンター専業でない企業については当然ですが、電力制限緩和は適用されず何らかの形で使用電力の削減を行う必要があります
。また、今回の震災で社内に設置されていたサーバが何らかの被害を受けた会社もあるのではないでしょうか。被災地はもちろんですが、被災地からある程度距離のある会社でも、何らかの影響が出ている会社はあると思われます。
 地震というリスク、電気が使用できなくなるリスク、様々なリスクを考えるとやはり重要なデータや処理を行うサーバ類はデータセンターに置くことが最もコストが安いと考えるべきなのかもしれません。この辺りは、担当者それぞれで考え方も違うのでは一概にこうだと言うことは出来ないのですが、少なくとも私は自社のサービス、特にWebサービスのようなモノについてはデータセンターに移行させる方向で検討しています。

 そこで一つ提案なのですが、データセンター事業者の皆さんは企業が自社内に設置しているサーバをデータセンターに移転することによるメリットを強く打ち出してはどうでしょうか? 単純に、地震や電力のネガティブリスクを強調するのでは無く、トータルコストではこのくらいしか変わらない、もしくは実はデータセンターの方がコストが安いといった数字があれば経営者としては大歓迎だと思います。その上で、地震などの災害によるコストには出来ないネガティブリスクも解説していただければ、これはある意味データセンターにとって大きなビジネスチャンスではないでしょうか。
 また、各企業に設置しているサーバをデータセンターに集約することによって、全体の電力消費が下がるのだったら、これは最大の理由になると思います。この辺りは私の想像で、実際に集約することによって総電力消費が下がらない可能性もあるのですが、空調などの電力消費の点だけでも集約した方が総電力消費は下がると思うのですが、、、。

 今回の震災後、データセンターの果たす本来の役割がクローズアップされたと思います。データセンターにサーバやデータを設置するメリットは、震災前とは比較にならないくらい大きなものになっていると思います。データセンター事業者の皆様には、ぜひその辺りの試算を行っていただき、地震大国日本でのサーバやデータの取り扱いについてインフラ担当者や経営者層に理解を深めさせていただければ幸いです。

[参考]
電気事業法に基づく使用制限の具体的内容について [PDF] 経済産業省 2011/5/25
電気の使用制限、データセンターは緩和措置 ITmedia 2011/5/26
データセンター「25%節電無理」 稼働停止危機も ITmedia 2011/4/18


投稿者 ymkx : 2011年5月30日 18:00 |